それは京王百貨店出展の初日のこと、
ご高齢とお見受けする小柄で控えめなご婦人が来店されて帽子をかぶってみると曰う。
さて〜、そんな時に何を差し出すか、それが思案のしどころである。
が、考える間もなく新作ドレープのハットを手に取った私。
「それ、難しいのでは?」ともう一人の自分が言うけれど迷っている暇もないから
ちょこんとお頭に載せて差し上げる。
すると、、、似合う!似合っている!!我ながら良いセレクションをしたものだと感心する。
お客様もまた、まんざらでもないお顔でうなずいている。
他に何点かお試しいただいたあと「これを買います」とあっさりご購入。
その時の私の態度が嬉しさに満ちていたらしい(後から分かる)。
そりゃ、嬉しいですよね、今回の代表作としてフライヤーに載せていた作品が
お客様に大変お似合いで、そして、あっさりとご購入いただくとは
帽子屋冥利に尽きると言うものだ。
私の経験上、滅多に無い。
それがその方、翌日にもまた見えて、
おすすめしたものを何点か試着されて、「これを買います」とやはり、あっさりお決めになった。
今回も代表作のような作品だ。
びっくり、とありがたい、のごちゃ混ぜな気持ちに見舞われて、とにかく頭、さげるさげる。
下げた頭から見えたお客様のスラックスにシミがついていたのが気になって
もしかしたら認知症?返品にいらっしゃるかも?
だから、ぬか喜びするなよ〜と自分に言ったほど。
ご購入いただいた方へはお礼のハガキを出すのだけれど
今回は特別にお礼の粗品を添えてお送りしたら、何と、電話がかかってきた。
最初に帽子を購入した時に私が「ありがとうございます!嬉しい!!」と言ったそれが
何と素直で、お嬢様なのかしら、久しぶりにこんな声を聞いた、と言うのだ。
足の下からボコボコと湧き上がってくるものがあって
それで翌日出かけて行ったのだと。
足の下からボコボコ、なんて表現に、こちらもクラ〜っときましたが
認知症などとの疑いはゼロ、全く失礼千万でしたね、ごめんなさい。
感動の言葉を忘れないようにメモを取りながらお話しして、
電話を切ってからも、しばらくその余韻に浸りました。
この歳になってお嬢様とは何だろう?という疑問符は残るけど
一生懸命が取り柄の私に、神様からのこんなご褒美、ときどき降ってくる。
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