随分前のこと。 当時住んでいた団地での、うる覚えのこんな会話。 「お姉ちゃんはたくさんお茶碗を割っているよ、 でも、自分はそんなに割ってないよ」 何気ないつもりで言った私に予想外の反応が返ってきた。 「それはあんたがあまりお手伝いをしていないっていうこと お姉ちゃんはもっとやっているから、割る茶碗も多いのは当たり前」 と、言葉はすっかり忘れているのだが、やや厳しい物言いが返ってきた。 母が台所に立ち、その傍らに控える10歳そこそこの私。 狭いキッチンの向こうのベランダから光が差して、 母の背中がシルエットになって、私の目に焼き付いている。 悪気のない私の心のどこかに、自分が偉い、みたいな傲慢さ…
母の思い出
